64 ロクヨン 前編
見応え十分の演技合戦
わずか7日間で終わった昭和64年。その年に起きた少女誘拐殺人事件は通称「ロクヨン」と呼ばれ、未解決のまま、時効まであと1年と迫っていた。刑事としてかつて捜査に関わった三上(佐藤浩市)は人事異動で広報官となり、実名報道を巡る記者クラブとの対立や上司との戦いに加え、家出した一人娘の行方にも気をもみ、心の休まる暇がなかった。そんな時、ロクヨンを模倣した新たな誘拐事件が発生する。
横山秀夫のベストセラー小説を前後編で映画化した作品。佐藤のほか、三浦友和、奥田瑛二、綾野剛、瑛太、仲村トオル、椎名桔平、永瀬正敏など主演級俳優そろい踏みのキャスティングの豪華さに驚く。
その俳優陣による演技合戦は見応え十分で、集団劇の熱の高さが伝わってくる。扇の要となる佐藤も好演。被害者の父親・雨宮(永瀬正敏)の家で涙を流すシーンは心を打つ。三上と雨宮、技術ミスをした科学捜査研究所の日吉(窪田正孝)もそうだが、本作の人々は、さまざまな「思い」を継続して引きずっている。
その悲哀を「ヘヴンズ ストーリー」の瀬々敬久監督が見事に描き出した。(2016年6月9日・小野)