クリーピー 偽りの隣人
日常に潜む不気味さ
「クリーピー(CREEPY)」とは「ぞっと身の毛のよだつような」とか「気味が悪い」という意味の形容詞。第15回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の同名小説を「岸辺の旅」「トウキョウソナタ」などの黒沢清監督が映画化した。
刑事から犯罪心理学の大学教授となった高倉(西島秀俊)は妻と共に転居して新生活を始める。しかし、高倉が未解決の一家失踪事件に興味を持ち始め、調べていくのと並行して隣人の西野(香川照之)とその家族の奇妙な言動に、高倉の周囲の人間と高倉の妻、高倉自身も巻き込まれていく。
西野のまさにクリーピーな怖さや、知らず知らずのうちに西野にマインドコントロールされていく高倉の妻(竹内結子)と、妻の変化になかなか気付かない高倉。3人の関係が緊張感を高め、不気味な怖さを感じさせる。
何げない日常の隣に潜む怖いもの、不気味なものがあることをこの映画は教えてくれる。夫婦のちょっとした隙間に忍び込んでくる災いをもたらす影、そうしたものの怖さや不気味さが伝わってくる作品だ。
中心となる西島、竹内、香川に加えて、川口春奈や藤野涼子、東出昌大の演技も素晴らしい。(2016年6月23日・金川)