ヒメアノ~ル
連続殺人鬼の強烈な姿
ビル清掃会社でパートとして働き、平凡な日々を送る岡田(濱田岳)。ある日、同僚の安藤(ムロツヨシ)に、思いを寄せるユカ(佐津川愛美)への恋の橋渡し役を頼まれ、ユカが働く店に行く。そこで高校で同級生だった森田(森田剛)と遭遇する。岡田はユカから、彼女が森田からストーカーされていると相談される。森田の過去を知る岡田は不穏な気持ちになる。やがて岡田の周囲で無差別の殺人事件が続発する。
古谷実の同名漫画の映画化。題名の「アノール」とはトカゲの一科のこと。アクの強い原作と斬り結び、映画もタイトルを中盤で出すなど意欲的だ。
濱田とムロツヨシのコミカルな前半から一転、後半では森田が連続殺人を犯す場面が展開され、そのギャップに驚く。中盤で内容が反転する作品は最近「最愛の子」や「ピンクとグレー」があったが、濱田と森田剛の演技も水と油なので極めて衝撃度が高い。その森田剛が演じた、高校時代にひどいイジメに遭い、母親の愛情を求め続けた連続殺人鬼の姿が強烈だ。
監督は「銀の匙(さじ) Silver Spoon」の吉田恵輔。凄惨(せいさん)だが、どこか悲しみを感じさせるのも印象深い問題作だ。(2016年7月7日・小野)