It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ボーダーライン

全編にあふれる緊迫感

メキシコ国境に近い米国アリゾナ州は麻薬組織の犯罪が深刻だった。FBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は経験と技量を買われ、麻薬カルテルの親玉を逮捕する特殊部隊にスカウトされる。彼女はCIAのマット(ジョシュ・ブローリン)率いるチームに編入されるが、マットは所属不明の男アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と組んでメキシコに侵入し、違法性の高い捜査を行っていた。チームの捜査方針に割り切れない思いを抱きながらもケイトはいや応なく任務に加わっていく。

「灼熱の魂」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作。原題はスペイン語で「殺し屋」のこと。ジャンル分けをすればアクション映画に違いないが、その枠に収まらないクオリティーの高さを見せている。

全編にわたって緊迫感があるが、トンネル内での銃撃戦の場面では敵の姿が画面に現れず、緊張感がひとしおだ。

自分の正義感と現実の過酷さのはざまで苦悩する主人公を演じたブラントも名演。彼女が「花火」だと連れて行かれた場所で目にする夜間の銃撃戦も、ロジャー・ディーキンスの見事な撮影により、観客の目に焼き付いて離れない。圧倒的な傑作である。(2016年7月21日・小野)

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