ふたりの桃源郷
山の生活25年間の軌跡
大阪で子どもや孫たちと暮らしていた田中寅夫・フサコさん夫婦は還暦を越えた時、山口県岩国市の山中で生活することを決心する。そこは電気も電話も水道もない山の中だが、戦後2人が自分たちで切り開いた田や畑がある大切な場所だった。
雑木をまきにし、山のわき水を利用して煮炊きや風呂に使う。発電機で電気をおこし、田畑では「自分たちの食べる分は自分たちで作る」生活。本当に2人だけの時間、苦楽を共にする満ち足りた時間が過ぎていく。しかし年月の経過とともに2人に「老い」が迫り、病気や認知障害などの困難が徐々に増してくる。畑仕事も含めて2人だけの生活が厳しくなる。
関西に住む子どもたちは自分たちと離れた所で生活する両親にどのように対応していくかを考え始め、両親の気持ちを第一に考えながら両親をできるだけ見守っていこうと話し合う。両親の老いが深まっていく中で、子どもたちはどのように両親に接していくのか。
山口放送が25年間にわたって取材してきたドキュメンタリーを映画用に編集した作品。夫婦の生活の様子を知るとともに、老後の過ごし方や家族のあり方について考えるきっかけになる作品だ。(2016年10月13日・金川)