何者
就活に焦る若者の心情
就職活動の情報を共有するため5人の大学生が集まる。物事を冷静に分析する拓人(佐藤健)、地道で素直な瑞月(有村架純)、意識高い系の理香(二階堂ふみ)、天真らんまんな光太郎(菅田将暉)、クリエーター系の隆良(岡田将生)。和やかな雰囲気で過ごしていたが、厳しい就活の中、異なる立場が微妙な緊張とひずみを生む。
理想と現実の狭間(はざま)で苦悩し、SNS(会員制交流サイト)で心中をさらす拓人。友の内定が焦燥感やいら立ちとなって彼を追い詰める。矛盾と葛藤しながら、自分の中の“何者”かを見いだそうとする姿は痛々しい。ある日、SNSに流した批判的な友人分析が理香に見つかり、ひどくなじられる。虚を突かれ、ぼうぜんとする拓人は抑えていた感情が一気にあふれだす。
タイプの違う若者を実力派の若手俳優たちが好演し見応えがある。現代の就活事情と若者たちの心情をシリアスに描く脚本、監督は演劇界でも確かな実力を持つ三浦大輔。リアルな映像の中に抽象的な演劇舞台を挟み、若者の心底と現実の境界を表現している。
原作は朝井リョウの直木賞受賞作。情報過多でSNSに翻弄される現代社会の生きにくい部分を赤裸々にあぶり出す。(2016年10月20日・杉尾久)