聖の青春
命を削って将棋に挑む
29歳で早世した将棋のプロ棋士・村山聖(さとし)を描く大崎善生の同名ノンフィクションを「宇宙兄弟」「ひゃくはち」の森義隆監督が映画化した。
聖(松山ケンイチ)は幼少期に「ネフローゼ症候群」という腎臓の病気にかかり、入院した時に将棋を知った。聖は才能を発揮し、やがてプロ棋士となる。病気と闘いながら将棋に向かう聖を支えるのは棋士仲間と師匠の森信雄(リリー・フランキー)。さらに羽生善治(東出昌大)へのライバル心も生きることと将棋への情熱を支えた。
聖と羽生はライバルでありながら交流が始まり、勝負を通していろいろと語り合うようになる。聖は実力をつけ「東の羽生、西の村山」と呼ばれるほどになった。しかし、ひたむきに将棋の道を進む聖の体を病気がむしばんでいく。
「負けることは死ぬことと同じ」と、まさに命を削って勝負に挑む聖を映画は静かに描いていく。松山ケンイチと東出昌大は実際の村山聖と羽生善治をほうふつさせる好演。原作とは違った切り口で村山聖を描いた佳作となった。大きな目標を持ちながら、病気のためにこの世を去った1人の若者の姿に、いろいろと考えさせられる映画でもある。(2016年11月24日・金川)