It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

皆さま、ごきげんよう

不条理劇的コメディー

オタール・イオセリアーニ監督、83歳。ひょうひょうとしながら八方破れな作風で、ジョージア(旧グルジア)の鈴木清順と呼びたい。前作「汽車はふたたび故郷へ」は自伝的要素の強い作品だったが、本作では自由奔放な「イオセリアーニ節」を発揮している。

革命期フランスでパイプをくわえた男が断頭台で処刑される開巻から、内戦下のジョージア、一転して現代のパリの話となる。アパートの管理人で武器商人の男(リュファス)と、骸骨集めが趣味の人類学者(アミラン・アミラナシュヴィリ)のおかしな友情と、彼らを取り巻く住人たちが描かれるが、特にストーリーらしいものはない。

コント集を見せられている感じだが、入念な計算がされてのお気楽さとも受け取れる。「しまった、あそこは笑うべきところだったか」などと時に思わされるのも仕込みがうますぎてのことか。

一筋縄ではいかない不条理劇的コメディーで、それが何ら難しい映像表現ではないのでいっそうだ。イオセリアーニ監督が年輪を重ねて熟成させた特製ワインをご賞味あれ。1度目でお口に合わなかった方はぜひ再見を。2口目の方が体に染み渡り、いい酔い心地になってくる名酒である。(2017年3月30日・小野)

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