It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

こころに剣士を

清冽で忘れがたい名品

エストニアが舞台とは珍しい。それも実話の映画化で興味が湧く。監督のクラウス・ハロはフィンランド人。米アカデミー賞外国語映画賞のフィンランド代表に選ばれた作品である。

1950年代初頭のエストニア。戦時中にやむなくドイツ軍にいた元フェンシング選手のエンデル(マルト・アヴァンディ)は、ソ連の秘密警察に追われ、田舎町ハープサルにやってくる。身を隠し、小学校の体育教師となった彼は課外授業としてフェンシングを教えるが、実は子どもを苦手にしていた。それでも授業をするうち、ソ連の圧政に親を奪われた悲しみを胸に秘めつつも学ぶ子どもたちの姿に何かが変わってくる。そんな時、レニングラードの全国大会に出場したいと子どもたちに要望される。エンデルは秘密警察に逮捕される危険を知りながら引率を決意する。

エンデルだけでなく、町の子どもたちもソ連当局に辛酸をなめさせられているのが胸に痛い。フェンシングでくじけぬ騎士道精神を教え、学んでいく両者の姿が清冽だ。終盤のフェンシング大会も迫力十分。リーサ・コッペルやヨーナス・コッフら子役もすばらしい。リトアニアの風景と相まって忘れがたい名品となった。(2017年4月13日・小野)

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