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シネマ1987online

ショコラ 君がいて、僕がいる

差別と闘う姿に胸熱く

ジュリエット・ビノシュがチョコレート売りをやった同名作もあったが、こちらは実在した黒人芸人のドラマである。

1897年、落ち目の白人芸人フティット(ジェームス・ティエレ)はフランス北部のサーカスで黒人芸人カナンガ(オマール・シー)と出会う。フティットは芸名をカナンガからショコラと改名した彼と道化師コンビを組み、世界初の白人と黒人のコンビとして人気を博す。パリの大サーカス団からも勧誘の声がかかり、人気は随一のものとなる。だがショコラには人種差別が降りかかり、酒とギャンブルに溺れていく。

人気はあっても、白人にあざ笑われるような役ばかりやらされるショコラ。これでいいのかとの思いでシェークスピアの「オセロ」を黒人の自分が演じて尊厳を示そうとするところに心を打たれる。念願かなって上演にこぎつけるが不評を買い、表舞台から消え、最後は寂しく死んでいく。自らの人生を「まずまずだった」とつぶやくショコラ。人種差別と闘って精いっぱい生き抜いた姿に胸を熱くせずにはいられない。

オマール・シーが入魂の名演。監督はロシュディ・ゼム。最後にショコラ本人の実演シーンがつくのも貴重な名作だ。(2017年5月4日・小野)

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