ムーンライト

アカデミー3部門受賞

第89回アカデミー賞で前評判の高かった「ラ・ラ・ランド」を抑えて作品賞と助演男優賞、脚色賞の計3部門を制した。

主人公のシャロンはマイアミの貧困地域で麻薬常習者の母の育児放棄や、学校でのいじめに遭いながらも、麻薬ディーラーのフアンやその妻、友達のケビンに助けられて成長していく。映画はシャロンの成長に合わせて少年期、高校時代、成人期の3部で構成され、それぞれの描写がまるで違う作品であるかのように展開される。

麻薬中毒の母の存在を背負いながらも、フアンと親子関係にも似た関係を深めていくシャロンを描く少年期。高校時代ではストリートで暴力を使いながらのし上がっていく姿と、友達と思っていたケビンへの気持ちが実は恋愛感情だったことに気がつき、葛藤する姿を描く。映画はシャロンの生き方とケビンへの同性愛の結末を切なく美しく描いていく。

監督・脚本はこれが長編2作目のバリー・ジェンキンス。シャロンを演じる3人の俳優の存在感や、フアンを演じて助演男優賞を獲得したマハーシャラ・アリの存在も忘れられない。アカデミー作品賞を得た理由を考えながら見るのも一つの見方である。(2017年5月11日・金川)