It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

美しい星

三島原作を大胆に脚色

三島由紀夫の異色SF小説の映画化。「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督による話題作である。

当たらないテレビ気象予報士の父、大杉重一郎(リリー・フランキー)。フリーターだが野心ある息子の一雄(亀梨和也)。美人で周囲から超絶している女子大生の娘暁子(橋本愛)。心に空虚を抱える母、伊余子(中嶋朋子)。平凡に過ごしていた一家がある日突然、火星人、水星人、金星人、地球人に覚醒する。地球には温暖化の危機が発生していた。危機を訴える重一郎らの覚醒は本当で、どこに向かうのか。

原作には米ソ冷戦時代の核戦争への恐怖があったが、映画では現代の地球温暖化や異常気象の問題へと大胆に脚色した。重一郎たちが自らを宇宙人と自覚するのも暁子が素性怪しい青年の竹宮と対面してからだが、違和感はない。原作ヤマ場のディスカッションもよくテレビスタジオに移植したものと感服する。

人間を客観視し、他者の視点から見つめ直そうとする作品の根本には揺るぎがない。3・11の場所に変えられたラストの美しさも同様だ。吉田監督のフィルモグラフィーで立ち位置が独特の作品だが、オンリーワンと言える今年の収穫の一本である。(2017年6月1日・小野)

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