手紙は憶えている
復讐の旅 衝撃の真実
「スウィート ヒアアフター」「白い沈黙」のアトム・エゴヤン監督が「サウンド・オブ・ミュージック」「人生はビギナーズ」の名優クリストファー・プラマーを主演に迎え、アウシュヴィッツを生き延びた老人の復讐を描いたサスペンス・ドラマである。
90歳の老人ゼヴ(クリストファー・プラマー)は最愛の妻を亡くし、それが分からなくなるほど認知症も進んでいた。ある日、友人のマックス(マーティン・ランドー)から1通の手紙を託される。そこにはゼヴとマックスが2人ともアウシュヴィッツ収容所の生存者で、ともに家族を収容所の看守に殺されたことが書かれていた。犯人は身分を偽り、今も生き延びているという。その犯人はルディ・コランダーという名前で4人にまで絞り込まれていた。ゼヴは車いすで体の自由が利かないマックスに代わり、たった1人で復讐の旅に出る。待ち受けていたのは衝撃の真実だった。
認知症による記憶障害に苦しみながらも、友人から託された手紙を頼りに復讐へと向かうゼヴをプラマーは熱演している。アウシュヴィッツをうまく取り入れながら、第一級のサスペンス映画に仕上げた意欲作である。(2月9日付・酒井)