ちょっと今から仕事やめてくる
ブラック企業から救済
第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞した北川恵海のベストセラー小説の映画化。「ソロモンの偽証」の成島出監督がメガホンを取っている。
ブラック企業で働く青山(工藤阿須加)は疲労のあまり無意識に線路に飛びこもうとしかける。間一髪で彼を救ったのは同級生で「ヤマモト」と名乗る青年(福士蒼汰)だった。青山には彼への覚えが全くなかったが、何かと助けてくれるヤマモトと会ってから明るさを取り戻していく。だが、ヤマモトは3年前に自殺していたことが分かる。
パワハラや長時間労働による過労死などの重たい題材を扱っているが、演出のテンポは快調だ。かばんを振り回しながら路上を駆ける青山を見た後ヤマモトは姿を消すが、青山に伝え損ねた言葉が「ありがとう」だったと分かるところがいい。青山はヤマモトによって救われたが、ヤマモトには過去に救えなかった大切な人がいた。ヤマモトは青山を通して救済を果たし自らも救われたのだ。
福士が爽やかに好演。大阪弁と、バヌアツの場面では英語力も発揮し俳優として一歩前進した。逃避でなく、目先を変えた生き方もあることを笑顔で教えてくれる。薫風吹くような快作だ。(2017年6月22日・小野)