ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
垣間見える葛藤と重責
1920年代のニューヨーク、37歳で夭逝した天才作家トマス・ウルフと伝説の編集者マックス・パーキンズとの熱い戦いの日々を描いた実話である。
ある日、パーキンズの机に膨大な枚数の原稿が届く。どこからも出版を断られたウルフのものだった。パーキンズはその非凡な才能に打たれる。それを傑作へと変貌させるためには長すぎる文章を削除する必要があった。ウルフの思いとそれを削除していくパーキンズの苦悩と忍耐の日々が始まる。
湧き出る言葉をとりつかれたように書きまくるウルフ、優しく寄り添いながらも冷静に容赦なく削除していくパーキンズ、作品を作り上げる熱き思いが伝わる。ウルフは愛人を、パーキンズは家族を、共に犠牲にして世に出した作品はベストセラーになった。
明確な編集をしながらも「作品をゆがめたのかもしれない」と、ふっと漏らした言葉に編集者としての葛藤と重責が垣間見える。奔放で情熱的な若きウルフを熱演するジュード・ロウに年齢的な違和感は全くない。思慮深く作家を導くパーキンズを円熟したコリン・ファースが重厚に演じている。マイケル・グランデージ監督。(2017年1月19日・杉尾)