ハクソー・リッジ

日米75人救った衛生兵

第2次世界大戦の戦場で、武器を持たない衛生兵としてアメリカ史上初めて名誉勲章を受けたデズモンド・ドスの実話をもとにした映画である。

バージニア州の田舎町で敬虔(けいけん)なクリスチャンとして育ったデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は第1次世界大戦で心の傷を負った父親につらく当たられ、兄弟げんかの度が過ぎて弟を気絶させてしまった過去から、一生武器を手にしないと誓う。戦争が激化すると、デズモンドは志願兵として陸軍に入隊するが、武器を取らないデズモンドは臆病者呼ばわりされる。彼が派遣されたのは「ハクソー・リッジ」と呼ばれる激戦地だった。

「ハクソー・リッジ」とは「のこぎり崖」の意味で、沖縄県浦添城跡の激戦地「前田高地」のこと。そこでの戦闘は地獄絵図で、映画は残虐な戦闘シーンを極限のリアリズムで描く。

戦場が凄惨であればあるほど、衛生兵として1人で75人もの日米の負傷兵を救った主人公の信念と意志の強さが心を打つ。監督は「ブレイブハート」のメル・ギブソン。「信仰」の主題を基調にリアルさを追求する作風に揺るぎがない。今や巨匠の風格があるギブソン監督の傑作だ。(2017年8月3日・小野)