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シネマ1987online

三度目の殺人

緊張感生む2人の熱演

 「そして父になる」「海街diary」など優れた作品を提供してきた是枝裕和監督が原案・監督・脚本・編集まで手がけた心理サスペンス。

 殺人の前科がある三隅(役所広司)が勤務先の工場の社長を殺害する。死刑はほぼ確定的かと思われたが、弁護を引き受けた重森(福山雅治)は無期懲役の判決を目指して事件の調査に取りかかる。三隅の話す内容は何回も変わり、さらに被害者の妻(斉藤由貴)や娘(広瀬すず)まで巻き込み、複雑な事件へと変化していく。

 初めは単に被告と弁護士という関係で三隅に接していた重森だったが、徐々に三隅の言動に疑問を抱くようになり、弁護士と被告の間に緊張感が生まれる。疑惑が解決されないまま、判決が言い渡される。判決後の三隅と重森の会話のシーンは極めて象徴的ではあるが、事件の真相はさらに闇を深めていく。

 「生きる価値のない人間は本当にいるのか」「人が人を裁くこと」や「今の裁判制度のあり方」など、是枝監督が投げかけている問題は大きい。役所広司と福山雅治の2人の熱演が緊張感を高めている。

 タイトルの「三度目の殺人」について、考えさせられる映画だ。(2017年9月14日・金川)

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