ベイビー・ドライバー

好センス光る大傑作

　天才的な運転技術で犯罪組織の逃走専門の運転手をしている童顔の青年ベイビー（アンセル・エルゴート）。両親を失った交通事故の後遺症で聴覚障害のあるベイビーはｉＰｏｄで音楽を聴きながら運転をこなす。大物犯罪者のドク（ケヴィン・スペイシー）に負債があったが、あと一度で借りを返せる最後の仕事が凶悪なバッツ（ジェイミー・フォックス）と組む銀行強盗だった。何とかやり遂げ自由の身となったベイビーはウエートレスのデボラ（リリー・ジェームズ）と恋をする。だが幸せもつかの間、ドクが新たな仕事を持ちかける。それは再びバッツと組むものだった。

　歩く主人公を長回しで撮影したタイトルバックから引きつけられる。カーチェイスや銃撃戦が音楽と一体となりミュージカル映画と化しているのが独創的で楽しい。ボーイ・ミーツ・ガールの恋愛劇主軸の犯罪映画としても素晴らしい。

　監督は「ワールズ・エンド　酔っぱらいが世界を救う！」のエドガー・ライト。「トレインスポッティング」でダニー・ボイルと、「ロック、ストック＆トゥー・スモーキング・バレルズ」でガイ・リッチーと出会えた時のうれしさがよみがえった。好センスが光る大傑作である。（2017年10月19日・小野）