火花
もがく芸人温かく描く
お笑いコンビ「スパークス」のボケ担当、徳永(菅田将暉)はデビューを果たすものの、鳴かず飛ばずの日々を送っていた。ある日、熱海の花火大会での営業で、4歳年上の先輩芸人の神谷(桐谷健太)と知り合う。神谷が見せた型破りな漫才に衝撃を受け、徳永は、神谷に弟子入りを願い出る。神谷は「俺の伝記を書いてくれ」と奇妙な条件を出し、徳永を弟子に迎える。こうして2人の師弟関係が始まり、徳永は神谷のお笑い哲学に深く心酔していく。
お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹の芥川賞受賞作の映画化である。主演の菅田は大河ドラマ「おんな城主 直虎」でも大活躍中。神谷役の桐谷はテレビCMの浦島太郎役でおなじみだ。監督・脚本はお笑い芸人出身で俳優としても多くの映画に出ている板尾創路。板尾監督の作品は「板尾創路の脱獄王」「月光ノ仮面」に続いて3作目となる。
売れっ子俳優たちが主演しているだけでも見る価値はあるが、ほろ苦い青春映画に仕上がっている点が良い。漫才の世界に飛び込んだものの、結果を出せずにもがいている芸人たちの生きざまを温かく描いており、多くの人が共感を覚えるだろう。(2017年11月30日・酒井)