グッバイ、サマー
少年たちの一夏の冒険
「エターナル・サンシャイン」「恋愛睡眠のすすめ」などのミシェル・ゴンドリー監督の新作である。
画家志望の14歳の中学生、ダニエル(アンジュ・ダルジャン)。女の子のような姿で級友からばかにされ、好きなガールフレンドにも無視され、母親は過保護で兄は荒っぽい。誰にも心を開けない日々を送っていたが、ある日、変わった転校生のテオ(テオフィル・バケ)がやってくる。テオは改造自転車に乗り、家業のために身体からガソリンのにおいをさせている。浮いた存在のダニエルはテオと親友になる。2人は夏休みに息苦しい生活を抜け出し、スクラップで車を作り、旅に出ることを思いつく。
いわば一夏の少年たちのロードムービー。それが廃品を集めて作った車で、見た目が「動く家」と言えるものによるのだから、とても楽しい。誰もが過ぎた日々と抱いた夢を思い出すに違いない。
夏の冒険の最後にビタースイートな経験があり、少年は少しずつ成長していく。ゴンドリー監督の映画は独特な色彩設計と映像センスで好悪が分かれるものが多いが、これは多くの観客の心にすっと入り込んで来そうだ。ラストシーンも素晴らしい。映画を見る至福を感じる一作だ。(2017年2月2日・小野)