弁護人
国家権力との闘い挑む
ソン・ガンホ出演作は韓国映画では品質保証書つきみたいなもの。本人の脚本選びがうまいのか、外れがない。本作でそのことをいっそう痛感させられる。
1980年代初頭、軍事政権下の韓国でソン・ウソク(ソン・ガンホ)は税務弁護士として多忙な日々を過ごしていた。そんな時、クッパ店の息子ジヌ(イム・シワン)が国家保安法違反容疑で逮捕され、拘置所で拷問を受けて変わり果てた姿となる。ウソクは世話になったジヌの母(キム・ヨンエ)に懇請されて弁護を引き受け、冤罪を晴らすため、国家権力との闘いに挑んでいく。
青年弁護士だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が担当した不当逮捕事件の「釜林(プリム)事件」を題材にした作品。当時の軍事政権の暴虐ぶりと恐ろしさが如実に示され、盧武鉉がモデルの弁護士の熱血漢ぶりに心を揺さぶられる。
ウソクが金目当ての俗物から、ジヌの弁護がきっかけで硬派の人権派弁護士に変わっていくところがいい。後半の裁判シーンはフランク・キャプラの「スミス都へ行く」などの作品をほうふつさせるほどだ。監督はヤン・ウソク。ソン・ガンホの熱演と相まって、韓国映画の血の熱い長所がよく出た力作である。(2017年2月16日・小野)