五島のトラさん
ある一家の22年の記録
日本の西にある小島群の五島列島。そこでうどんの製麺業を営む「トラさん」こと犬塚虎夫さん一家を22年にわたって追い続けたドキュメンタリーである。
過疎化が進む五島で名物「五島うどん」を作る犬塚夫妻は7人の子だくさん。子どもたちは毎朝5時に起き、うどん作りを手伝ってから学校へ行く。その子どもたちが成長し、家族と別れ、結婚し出産し、冠婚葬祭で故郷へ帰ってくる。ごく普通の一家の移り変わりがすくい取られていく。
トラさんの教育は家父長的権威を示したもので気になる向きもあるかもしれない。だが子どもたちに家業を手伝った分、給料として渡し、金銭感覚を養う教育などまっとうなものと思わされる。子どもたちも父親の真の優しさを感じているのか、逆らわずに仕事を手伝っていて愛らしい。
監督はテレビ長崎の大浦勝。子どもたちの22年にわたる成長が追体験できるのが素晴らしい。「6歳のボクが、大人になるまで。」を記録映画で見せてもらっているようだ。若い頃は精悍で高校時代は野球選手として国体で優勝したトラさんだが、年取って病がちになり亡くなっていく。人の生き死に、家族の喜び悲しみ、すべてが詰まった映画だ。(2017年3月9日・小野)