ナチュラルウーマン
理不尽な偏見と差別
ウエートレスをしながらナイトクラブで歌っているトランスジェンダーの歌手マリーナ(ダニエラ・ベガ)は、チリのサンティアゴで年齢差のある恋人オルランドと幸せな日々を送っていた。しかしマリーナの誕生日を祝った晩、家に戻ると、急にオルランドの意識が遠のき、そのまま他界する。
悲しみに暮れるマリーナだったが、トランスジェンダーというだけで、警察からあらぬ疑いを掛けられる。さらに、2人で暮らしていた部屋を追い出され、葬儀への参列も拒絶されてしまう。
アカデミー賞外国語映画賞と、ベルリン国際映画祭銀熊賞(脚本賞)を受賞したチリの作品である。監督は「グロリアの青春」(2013年)のセバスティアン・レリオ。トランスジェンダーゆえの偏見や差別にさらされ、最愛の人の葬儀にも参列できない主人公が、この理不尽な現実に誇り高く、力強く立ち向かっていく姿は感動的である。
主演のベガは実際にトランスジェンダーの歌手。共演はフランシスコ・レジェス、ルイス・ニェッコ。監督のトランスジェンダーに対する温かいまなざしが多くの観客の共感を呼ぶ力強い作品だ。(2018年04月12日・酒井)