孤狼の血
東映実録路線を継承
暴力団対策法成立直前の広島県呉原市。暴力団・尾谷組と新興勢力の加古村組の抗争がくすぶっていた。所轄署の捜査二課暴力団係に配属された刑事の日岡(松坂桃李)は暴力団との癒着が取り沙汰されるベテラン刑事の大上(役所広司)とともに、加古村組関連の金融会社社員の失踪事件の捜査に当たる。2人はいや応なく暴力団の抗争に巻き込まれていく。
東映の配給作品で岩に荒波の往年の東映マークが出る冒頭からぞくぞくする。ピエール瀧、江口洋介らやくざを演じる俳優たちの面構えがいい。やくざ以上にやくざっぽい刑事大上の役所は言わずもがな。松坂と加古村組系やくざ役の竹野内豊は新境地を開拓した。
原作は「このミステリーがすごい! 2016年版」国内編第3位に入った柚月裕子のベストセラー小説。養豚場の開巻から大上受難後のクライマックスまで見事な脚色が施されている。
監督は「日本で一番悪い奴ら」「彼女が名前を知らない鳥たち」の白石和彌。キャストと白石監督以下スタッフの熱い熱量が画面からひりひりと伝わる。かつての東映実録路線を継承していこうとする思いも感じられる。その意気やよしのエンターテインメントの傑作だ。(2018年05月17日・小野)