女は二度決断する
理不尽な現実への怒り
ドイツのハンブルクでカティヤ(ダイアン・クルーガー)は学生時代に出会ったトルコ系移民のヌーリ(ヌーマン・アチャル)と結婚し、息子にも恵まれて幸せな日々を送っていた。ある日、ヌーリの事務所前で爆発事件が起こり、最愛の夫と息子が巻き込まれて命を落としてしまう。
ヌーリが移民だったことから警察は最初、外国人同士の抗争を疑うが、ネオナチの若いドイツ人夫婦が逮捕され、裁判にかけられる。しかし、その裁判は思いもよらない方向に進む。
ファティ・アキン監督はトルコ系移民二世で、「愛より強く」「ソウル・キッチン」などの作品で高く評価されている。ドイツ出身のクルーガーはこれまでアメリカ映画への出演が多く、ドイツ語の映画は本作が初めてだったが、愛する夫と息子を失った主人公の苦難の日々を見事に表現。昨年のカンヌ映画祭で女優賞に輝いた。
卑劣な移民排斥テロによって最愛の家族を奪われた女性の怒り、そして法廷でも裁かれない理不尽な現実に、彼女はどのようにして立ち向かったのか? 彼女の決断が正しいとは言えないが、心にぐさりとくる。ドイツでの移民問題の難しさもまた表現している問題作である。(2018年05月24日・酒井)