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シネマ1987online

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

逆境で育む夫婦の絆

動植物や風景を感性豊かに素朴なタッチで描いたカナダの画家モード・ルイス。その半生と逆境の中で育まれる夫婦の絆を描いた伝記的ドラマである。

重度のリウマチで障がいのあるモード(サリー・ホーキンス)は身内からも疎まれていた。ある日、彼女は家政婦を募集する漁師のエベレット(イーサン・ホーク)と出会う。二人は粗末な小屋で共同生活を始める。武骨で横暴なエベレットがモードの無邪気さに触れ、本来の優しい夫となるまでの丁寧な演出が素晴らしい。街から小屋までの長い道、日を追うごとに歩くふたりの距離が近くなるシーンは秀逸だ。

彼女が心の赴くまま壁に描く絵は鮮やかな色彩で小さな家を輝きで包み、やがて港町の片隅から世界へと飛び立つ。「どんな人生でも自由な精神で楽しめば素晴らしいことが待っている」。差別やつらい現実を程よいユーモアではね返すモードの芯の強さを「シェイプ・オブ・ウォーター」のホーキンスは乗り移ったような迫真の演技で見せる。精悍な俳優イーサンは、頑固だが優しさを秘めた漁師を好演。ほんの一握りの勇気と優しさで人生が豊かになる可能性を教えてくれる。監督はアシュリング・ウォルシュ。(2018年06月14日・杉尾久)

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