タクシー運転手 約束は海を越えて
光州事件取材に協力
1980年5月18日から27日にかけて韓国の光州市を中心に、軍事政権に反対する市民や学生の大きな運動が起きる。政府と軍は光州市に戒厳令を出し、軍による武器の使用と報道管制で運動の弾圧を始めた。
徹底した報道管制のためにこの事件は韓国内でも海外でも事実が報道されることはなかった。東京にいたドイツ人記者のピーター(トーマス・クレッチマン)は事件のうわさを聞き、その真相を取材するため光州に入ることを決意する。ピーターを光州まで案内するのが、娘と2人暮らしをしている個人タクシーの運転手マンソプ(ソン・ガンホ)である。
高額のタクシー料金で光州往復の仕事を引き受けたマンソプだったが、移動も容易にできず、しかも日を追って激しくなる軍隊の市民への攻撃に巻き込まれてしまい、光州から逃げることを考え始める。しかし光州市での学生や市民への弾圧の実態はマンソプの意識を変えていく。
監督は「高地戦」「義兄弟」のチャン・フン。事実をベースに、映画的な面白さを加えながら、光州事件と1人のタクシー運転手が事件の報道に果たした役割を見事に描いている。主人公を演じる名優ソン・ガンホの演技が光る。(2018年06月21日・金川)