ビジランテ
ドラマの見応え満点
「22年目の告白 私が殺人犯です」の入江悠監督が生まれ故郷の埼玉県深谷を舞台に、オリジナル脚本で挑んだ意欲作。
町の有力者で暴力的な父に耐え切れなくなり、神藤家の3兄弟の長男、一郎は、弟の二郎と三郎の眼前で川を渡って逃亡する。30年後、父の死をきっかけに、父の後を継ぐように市議となった二郎(鈴木浩介)と、デリへル店長三郎(桐谷健太)が暮らす地元に、失踪していた一郎(大森南朋)が帰ってくる。二郎は市議会の大物の岸(嶋田久作)らが進めるアウトレットモール建設計画のために、父の不動産を売却しようとし、土地の所有権を巡って3兄弟が衝突、地元のやくざも絡んで陰惨なものとなっていく。
タイトルは「自警団」のこと。二郎の関係する町の夜警グループのほか、悪徳政治家ややくざたちと対決する一郎たち兄弟を指しているようだ。
これほど暴力性に満ち、救いがないドラマも珍しい。だが見応え満点で、画面から目が離せない。テイストは日本版フィルムノワールと言えるほどで、デジタル機材で「フィルム」の質感を持つ大塚亮の撮影が素晴らしい。入江監督の演出や出演者の演技は言わずもがな。掛け値なしの傑作である。(2018年09月13日・小野)