ガチ星

男のドラマに胸が熱く

プロ野球選手だったが戦力外通告を受け、生活がすさみ、妻子とも離れた濱島（安部賢一）。パチンコや酒に溺れ、親友の妻と不倫する自堕落な暮らしを送っていた。ある日、行きつけのラーメン屋で競輪選手になることを勧められて興味を抱き、４０歳以上でも入れる競輪学校に入学する。だが、待っていたのは過酷な訓練と若者たちからのいじめだった。

競輪発祥の地である福岡県の小倉を舞台に、福岡出身の江口カンが監督し、主要キャストも福岡出身者で固めたテレビドラマの映画版。主人公役の安部賢一は実際に競輪選手を目指した経験がある。俳優としてなかなか目が出ず、本作に出演できなければ引退する覚悟だったらしい。そのことも駄目男の競輪での再生を描いたドラマに圧倒的なリアリティーを与えている。

濱島は競輪学校で、他の同級生とは違い、ずばぬけた成績を残す久松（福山翔大）を知る。久松が稽古に一心に取り組む姿に「何でそこまでできるんだ」と濱島が叫ぶ場面には泣かされずにはいられない。久松は母親を施設に預け、自らの退路を断っていた。谷底に落ちてもはい上がり、何事かをなし遂げようとする男の中の男のドラマに胸が熱くなる。（2018年09月20日・小野）