希望のかなた
難民問題 哀感込める
内戦激化のシリアからフィンランドの首都ヘルシンキに逃れたカーリド青年(シェルワン・ハジ)が、出会った人々の善意に助けられながら、生き別れた妹ミリアム(ニロズ・ハジ)を捜し呼び寄せようとする姿を描く社会派コメディー。
監督はフィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ。難民申請のため入国管理局で面接を受けるカーリドが「宗教は葬り捨てた」と答える場面で、監督は内戦の根源にある宗教問題をさらりと批判してみせる。申請は却下され、理不尽な暴力や差別を受け、行き場を失うカーリド。収容施設の女性、仕事の上司や同僚の優しさに胸が熱くなる。
人種、宗教を超えて互いを認め受け入れることから始まる希望への第一歩。「難民は哀れで図々しい経済移民と捉えるヨーロッパの風潮を打ち砕く」という監督の意図は、人情味ある独特の雰囲気と哀感を醸しながら胸を揺さぶる。登場人物は皆仏頂面で無表情。不意をつくユーモアとのギャップが愉快。外国人が陥りやすい勘違いを逆手に取ったすし屋の演出は親日家監督の真骨頂、爆笑ものだ。
日本になじみ深いメロディーは懐かしさを覚え心地よい。果たしてカーリドの希望のかなたに平穏は見えたか。(2018年01月25日・杉尾久)