散り椿
武士の生き方と夫婦愛
故郷の扇野藩の不正を訴え出たものの、認められずに、妻の篠(麻生久美子)と共に藩を出た瓜生新兵衛(岡田准一)。京都での2人の生活も篠の病死で終わり、新兵衛は篠の残した「采女さまを助けていただきたいのです」という願いをかなえるために扇野藩に戻る。
扇野藩では側用人・榊原采女(西島秀俊)と城代家老・石田玄蕃(奥田瑛二)の藩政改革をめぐっての争いが続き、篠の実家で篠の弟や妹と暮らす新兵衛もその争いに巻き込まれることになる。新藩主のお国入りを前に采女と玄蕃の争いは激しさを増し、新兵衛は篠の残した言葉の意味と不正の真実に気付いていく。
「蜩ノ記」で直木賞を受賞した葉室麟の小説「散り椿」を映画化した作品。「劔岳 点の記」の木村大作が初めて時代劇の監督に挑戦した。撮影監督として数々の名作を手掛けてきた木村監督だけに、四季折々の自然をうまく取り入れた見事な映像を見せている。
主演の岡田准一を中心に、黒木華や富司純子などの出演俳優が素晴らしい演技で、見応えのある時代劇にしている。武士の生き方や夫婦愛、背景を丁寧に描くことで「美しい時代劇を作りたい」という監督の熱意が実った映画である。(2018年10月04日・金川)