きみの鳥はうたえる
函館舞台 指折りの秀作
函館郊外の書店に勤めている僕(柄本佑)は失業中の静雄(染谷将太)と一緒に暮らしていた。そこに僕と同じ書店で働く佐知子(石橋静河)も加わる。3人は毎晩のように酒を飲み、クラブへ行き、踊り、笑い合う。そんな日々を送る晩夏に静雄がキャンプへ行こうと言い出す。僕が誘いを断り、静雄と佐知子だけで行くことになったことから、3人の関係は微妙に変わってくる。
「海炭市叙景」(2010年)、「そこのみにて光輝く」(14年)、「オーバー・フェンス」(16年)に続く佐藤泰志の小説の映画化4作目。いずれも函館を舞台に作られている。本作は原作の舞台は東京だが、函館に移され、土地の空気感や光線の具合まで感じさせる作品に仕上がった。
函館の情景が3人の心象風景となっているのも素晴らしい。3人の姿がその土地において飾らず、どこまでも自然で、まるでフランソワ・トリュフォー監督「突然炎のごとく」の日本版と言いたい見事さだ。監督は「Playback」の三宅唱。この一作で多くの人の脳裏に刻まれるだろう。青春映画としてはもちろん、恋愛映画としても特筆すべき、今年の日本映画で指折りの秀作だ。(2018年11月08日・小野)