愛と法
同性婚弁護士の日常
弁護士で同性婚の男性カップル、カズ(南和行)とフミ(吉田昌史)の日常を追ったドキュメンタリー。
2人が営む法律事務所には少数派の人権に関わる依頼が殺到している。少年事件、無戸籍者、君が代不起立で処分を受けた教師、わいせつ物陳列罪で逮捕された漫画家。それらに休む間もなく奔走するカズとフミ。そんな彼らをカメラは優しく慈しむように映し出す。偏見と保守的な感情を変えることは容易ではない。厳しい判例を扱いながらも重たくならないのは優しく繊細で明るい2人の人柄と、画面に登場する人が愛情豊かでリベラルな思考を持った人たちだからかもしれない。
「子供を支えるより、受け入れるということ。受け入れへん方がしんどいよ、お互い」。カズの母の言葉が印象的だ。受容と尊重、本来人々を守るためにある法の根底に愛があるならば、ことはもう少し平和的に解決するはずだ。10歳からオランダで育った戸田ひかる監督は長年ディレクター、編集者として各国で映像を制作、本作で22年ぶりに帰国した。細部を取りこぼさないみずみずしい感性があり、先が楽しみな監督だ。昨年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞。(2018年11月15日・杉尾久)