ビブリア古書堂の事件手帖
本をめぐるミステリー
鎌倉の古書店「ビブリア古書堂」の店主・篠川栞子(黒木華)は人見知りだが、本については該博な知識を持つ。ある日、五浦大輔(野村周平)という青年が一冊の本を持ち込む。亡くなった祖母の遺品で夏目漱石の「それから」だった。本に記された署名を見た栞子は、この本には大輔の祖母が死ぬまで守った秘密が隠されていると推理する。そんな栞子に祖父から受け継いだ太宰治「晩年」の初版本をわが物にしようとする謎の男の影がちらつき始める。
三上延の人気ミステリー小説の映画化。原作の中の夏目漱石と太宰治にまつわる挿話を抜き出し、クライマックスも1本の映画ならではのものに改変されている。
古書には作者の思い、読んだ人の思いなどいろんな思いが積み重なる。本は時を超えて、さまざまな人に受け継がれる。「ビブリア古書堂」はタイムマシンのようだ。
現代にたどり着いた本は私たちの生き方をも変えていく。栞子と大輔が本に関する事件で成長する姿を見るうちに、電子版で読めるものでも、本を手に取って読んでみたくなった。監督は「幼な子われらに生まれ」の三島有紀子。女性監督らしいきめ細やかさが随所に感じられる秀作だ。(2018年11月22日・小野)