It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

今夜、ロマンス劇場で

映画愛あふれる作品

映画監督を夢見る青年牧野健司(坂口健太郎)が恋い焦がれるモノクロ映画の中のお姫様美雪(綾瀬はるか)。ある日、健司の目の前にスクリーンの中の美雪が現れた。健司は戸惑いながらも現実を受け入れ2人は引かれ合っていく。

ヘプバーンを思わせる美雪の凛とした佇(たたず)まいと美しさ、健司を「しもべ」と呼ぶ奔放な振る舞いも実にチャーミング。綾瀬はるかのなんと魅力的なことよ。彼女を愛する純粋でピュアな坂口健太郎も思わず抱きしめたくなるほどのはまり役だ。美雪は人と触れ合うと現実世界から消えてしまう。深く愛し合いながらも決して触れることができない究極のプラトニックが切なく涙を誘う。

1960年代のはかなく繊細な恋物語は美しい色彩と音楽に乗って大きな感動へと昇華していく。綾瀬の衣装とヘアメークも見どころ。柄本明ほか個性的な俳優が脇を固めて盛り立てる。過去の映画へのリスペクトも盛り込まれ、映画愛にあふれた作品となった。

虚構の空間を想像という翼で漂う、そんな時間を与えてくれる映画が一瞬で消えることなくずっと在り続けてほしいと心から願う。監督・脚本は「のだめカンタービレ」の武内英樹。(2018年02月15日・杉尾久)

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