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シネマ1987online

羊の木

人々の漠然とした希望

2014年文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した山上たつひこ・作、いがらしみきお・画のコミックの映画化。「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督作品で、第22回釜山国際映画祭でキム・ジソク賞を受賞した話題作である。

過疎化が進む港町・魚深で、市役所職員の月末(錦戸亮)は移住してきた宮腰(松田龍平)、杉山(北村一輝)ら6人の男女の受け入れを命じられる。怪しい彼らは全員が、極秘の国家プロジェクトで仮釈放された元殺人犯だった。ある日港で死亡事故が発生、近くには杉山の姿があった。

松田、北村ほか田中泯ら元殺人犯たちの個性が際立っているのがいい。ご神体を見たらいけない港町の奇祭「のろろ祭」も不穏な雰囲気を醸し出す。全作品が原作つきで大胆な改変が特長となってきた吉田作品だが、本作でものろろ像のそばの断崖でのクライマックスなど独自の展開で、まがまがしいものからの浄化を思わせて心に残る。

「羊の木」とは昔西洋で綿が「羊のなる木」と思われていたのが元になった伝説の植物のこと。人々の漠然とした希望が示されているようで、他者を受容し共生することへのかすかな希望が感じられる。この映画の懐は深い。(2018年02月22日・小野)

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