グリーンブック

根強く残る差別に怒り

１９６２年、ニューヨークの高級ナイトクラブで用心棒を務めるトニー・リップは店の改修で仕事がなくなり、黒人ピアニストのドクター・シャーリーの運転手として働くことになった。２人は黒人用の旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに人種差別が色濃く残る南部で演奏ツアーを行う。性格も境遇も異なる彼らは衝突を繰り返すが、次第に打ち解けていく。しかし根強い差別が彼らの前に立ちはだかる。

実話に基づく人間ドラマ。今年のアカデミー賞では５部門の候補となり、作品賞など３部門で受賞した。主演は「はじまりへの旅」などのヴィゴ・モーテンセン。黒人ピアニスト役マハーシャラ・アリは「ムーンライト」に続いてアカデミー助演男優賞を受賞した。監督はキャメロン・ディアス主演の「メリーに首ったけ」などのピーター・ファレリー。

天才黒人ピアニストと運転手兼用心棒として雇われたイタリア系アメリカ人が、旅を通して深い友情で結ばれていく姿を、ユーモアを交えてうまく描いている。

粗野で無教養な白人と教養あふれる黒人という対比が面白いが、単に友情を描くだけでなく、差別への怒りがふつふつと湧き上がってくる作品でもある。（2019年03月14日・酒井）