チワワちゃん

誰も知らない彼女の姿

「ＳＬＵＭ－ＰＯＬＩＳ」などの自主映画で注目された二宮健監督の新作。岡崎京子の同名コミックの映画化である。

奔放な毎日を送っているミキ（門脇麦）たち若者グループ。ある日、東京湾で殺人事件に遭った被害者の身元が判明する。ミキたちのアイドル的存在の「チワワちゃん」こと千脇良子（吉田志織）だった。ミキがひそかに恋していたヨシダ（成田凌）の恋人として現れたチワワ。バーでＶＩＰ席の男から政治家に渡す６００万円入りのバッグを盗み、チワワはミキたちと豪遊。３日で使い果たしてしまう。皆は日常に戻ったが、チワワだけが狂騒を続ける。チワワをしのんで集まった仲間たちは誰も最近の彼女を知らなかった。雑誌の取材を受けたミキは仲間たちにあらためてチワワとの思い出話を聞きに行くが、それぞれのチワワ像は全く違っていた。

ビキニと海パン姿で若者たちが狂騒する中盤までのサイケデリックな撮影と編集には目まいがするほど。だが過去作で多かった暴力性は抑えられ、性の奔出をよく表現している。後半、異なる証言の積み重ねで核心に迫るのは「市民ケーン」や「羅生門」を思い出させる。古酒を新しい皮袋に詰めた新時代の秀作だ。（2019年03月28日・小野）