バーニング劇場版
村上春樹小説を映像化
「ポエトリー アグネスの詩」のイ・チャンドン監督が村上春樹の小説「納屋を焼く」の映像化に挑んだ話題作。
運送会社のアルバイト社員で作家志望のジョンス(ユ・アイン)は幼なじみのヘミ(チョン・ジョンソ)と再会する。一度肉体関係を持った後、ジョンスはアフリカ旅行に行くヘミから飼い猫の世話を頼まれる。帰国したヘミは青年ベン(スティーブン・ユァン)を伴っていた。裕福だが職業不詳のベンはジョンスにビニールハウスを焼いて回る趣味があることを告白する。そんな折、ヘミが行方不明になる。
姿を見せない猫、無言の電話、水のない井戸などヘミの失踪に絡むミステリアスな設定は「不在」や「喪失」から人間存在を照射する春樹ワールドの特色を出している。だが「納屋」が「ビニールハウス」に変更されただけでなく、原作を超越した、テレビ版より50分以上長い劇場版でのラストには驚かされる。
高度な資本主義社会の下、格差社会となり行き場を失った若者の怒りなど社会批判を強めた。それでいて北朝鮮との国境付近にあるジョンスの実家を訪れたヘミがダンスするシーンの素晴らしさ。イ・チャンドン独特の映像世界にいや応なく引き込まれる傑作だ。(2019年04月04日・小野)