天国でまた会おう

大胆な詐欺で戦争断罪

フランスで大ヒットし２０１８年のセザール賞で監督賞など５部門を受賞したドラマ。脚本・監督のアルベール・デュポンテルは役者も兼任。

第１次世界大戦終結間近、軍上官の卑劣な画策で生き埋めになったアルベール（アルベール・デュポンテル）を救ったエドゥアール（ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート）は直後に爆撃を受け、顔下半分と声を失う。パリに帰った２人を待っていたのは、戦没者はたたえるのに復員兵には冷たい世間。仕事も恋人も失ったアルベール、厳格な父を嫌い家に帰ることを拒むエドゥアールは戦死を偽装する。人生を戦争によって砕かれた彼らは戦争に関わる全ての罪を断罪すべく国を相手に壮大で大胆な詐欺を企てる。その裏に隠されたドラマはあまりに切ない。

奇想天外で寓話的な展開は先が読めず、目が離せない。シーンごとにエドゥアールがかぶる仮面は滑稽で優美で瞳は雄弁だ。ほぼ仮面をかぶったまま目と動作だけで心情を表現する演技は必見。その瞳に胸が締め付けられ、感動せずにはいられない。

原作はピエール・ルメートルのフランス文学賞ゴンクール賞受賞作。映画は独特の世界観を悲喜劇として見事に実写化した。（2019年04月18日・杉尾久）