It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

ウトヤ島、7月22日

テロの恐怖リアルに

2011年7月22日、単独犯として史上最悪77人の犠牲者を出したノルウェー連続テロ事件の映画化。「ヒトラーに屈しなかった国王」のエリック・ポッぺ監督作品である。

ノルウェーのウトヤ島でサマーキャンプを楽しむカヤ(アンドレア・バーンツェン)ら若者たち。突然爆発音が起こり、数人の若者が逃走してくる。銃声らしき音が絶えず響く中、カヤもわからぬまま逃げ出す。やがて頭から血を流した少年から、警官が犯人で人を銃撃していると知らされる。逃げるか動かず助けを待つかで若者たちが揺れる中、カヤははぐれた妹の姿を探しに走りだす。

「カメラを止めるな!」などワンカット長回しの作品が話題だが、本作は極めつけだ。無差別銃乱射事件が起こり、終息したのと同じ72分で全編ワンカット撮影し、若者たちを襲った恐怖を観客にリアルに体験させる。

犯人は何発銃弾を持っているのかなど気になる点はあるが、臨場感がただ事ではない。少女の腕に止まる蚊のシーンは偶発的でも、練り上げた演出のように思える。終盤の展開は特に衝撃的だが、惨劇の中で若者たちがお互いを思いやる言動に光明を感じさせる。ポッぺ監督は驚くべき映画を撮り上げた。(2019年05月09日・小野)

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