こんな夜更けにバナナかよ　愛しき実話

考えさせる患者と介護

喫茶店で働く安堂美咲（高畑充希）は最近なかなか会えない恋人の医学生・田中久（三浦春馬）に会うため、鹿野靖明（大泉洋）の家を訪れる。筋ジストロフィー患者で慢性的なボランティア不足に悩まされている鹿野は美咲をボランティア志望者と思い込み、早速用事を言いつける。

反発を覚える美咲だったが、鹿野が病院や施設で生活するのではなく自分の思うままに生きていこうとしている姿に次第に共感を持ち始める。２４時間ボランティアの支援が必要な鹿野はボランティアに遠慮なく自分の要求を出す。

ボランティアたちは愚痴を言い合いながらも懸命に鹿野の自立を支えようとする。そんな中で美咲と久の関係も少しずつ変わっていく。

原作は大宅賞など二つのノンフィクション賞を受賞した渡辺一史の「こんな夜更けにバナナかよ筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」。この実話を基に「ブタがいた教室」の前田哲監督が鹿野とボランティアや両親との交流を温かく描いている。大泉が主役の人柄を感じさせる演技を見せるほか、ボランティアを演じる高畑らの演技も好感が持てる。ボランティアや介護について考えてみたくなる映画である。（2019年01月10日・金川義守）