海獣の子供
壮大なイメージに圧倒
中学生の少女琉花(るか)は父親が働く水族館を訪ね、ジュゴンに育てられたという不思議な少年・海と空に出会う。琉花は2人の「海獣の子供」に導かれながら、流星を目撃し、クジラの歌によるコミュニケーションを知り、光るジンベイザメの群れに遭遇する。そして隕石が落下した海域に海の生き物が集まる「祭り」に招かれる。
原作は文化庁メディア芸術祭優秀賞に輝いた五十嵐大介の同名漫画。ペン描きしたような繊細な絵をダイナミックに動かす「スタジオ4℃」のアニメーション技術の高さに驚嘆する。芦田愛菜など声の出演者も本人の顔を忘れるくらい溶け込んでいる。後半は壮大なイメージが洪水のようにあふれ出し、ほとんど物語の流れを追うことができなくなる。親切なハリウッド映画と違う、不親切さに困惑しながらも圧倒される。
隕石が海に落ちて海から宇宙が誕生するというSF的、宗教的な説明があるが、映像は触媒であり、インスピレーションを得た観客の内部で化学反応が起こり、思考と感情を呼び起こし完結する詩のような映画である。ラストに流れる米津玄師の主題歌も映画の内容を端的に表している。(2019年06月27日・後藤)