誰もがそれを知っている

誘拐事件と家族の秘密

ラウラは妹の結婚式に出席するため、アルゼンチンから娘のイレーネと一緒に故郷のスペインに帰省する。久々に家族に会って、幼なじみのパコとも再会する。パコはワイナリーを営み成功していた。

しかし結婚式の夜、パーティーの喧騒（けんそう）の中でイレーネが姿を消し、やがて巨額の身代金を要求するメッセージが届く。娘の命を心配するラウラは警察には通報せず、パコに協力を仰ぎ、自分たちで解決する道を選ぶ。パコはさまざまな手段で時間稼ぎをする。アルゼンチンからラウラの夫も駆け付けてくる。

アカデミー外国語映画賞を「別離」と「セールスマン」で２度受賞したイランの名匠アスガー・ファルハディ監督がハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス夫妻を主演に迎え、スペインで撮り上げたサスペンスである。娘を誘拐された母親を取り巻く人間模様を浮き彫りにする中で、家族がひた隠しにしてきた秘密が少しずつ明らかになっていく。

ファルハディ監督の演出はさえわたり、最後まで緊迫感がみなぎる作品に仕上がった。人間のドロドロとした内幕も描き出されており、普通のサスペンスとは一味違う出来栄えになっている。（2019年07月11日・酒井）