天気の子
美しい色彩 細かな描写
「君の名は。」が記録的大ヒットとなった新海誠監督3年ぶりの新作。
離島から家出をし、東京に来た高校1年生の帆高(醍醐虎汰朗)。連日雨の降る新宿で都会の生きづらさを味わっていた。夜食を取る金もなくなったが、少女からハンバーガーをおごってもらう。少女は陽菜(森七菜)という名で、どんな悪天候も晴天に変える能力を持つ「晴れ女」だった。帆高は陽菜の能力を生かした晴天請負業を始め、陽菜に引かれていく。だが陽菜は次第に体に異変を感じ始める。
人は晴れれば気持ちがよくなり、雨続きだと憂鬱になる。体調面にまで影響を及ぼす天気を題材にした作品。天気のように選びようのないものを、若者たちが自らの手で変えていこうとするところが素晴らしい。終盤の展開には驚くが、日常の細かな描写の積み重ねで過去作より説得力があり、帆高と陽菜が空中で逆さまになりながら舞い降りる場面はいつまでも心に残る。
美しい色彩は新海アニメの本領発揮で、RADWIMPSの音楽も見事。「人を笑顔にする」ために晴天を呼ぶ陽菜と帆高に、自分も誰かの役に立つ生き方を探してみたくなる。映画館を晴れやかな気持ちで出られる快作だ。(2019年07月25日・小野)