凪待ち

不条理な運命に翻弄

ギャンブル依存症で無為な毎日を送る木野本郁男（香取慎吾）は、恋人でシングルマザーの亜弓（西田尚美）と娘の美波（恒松祐里）と共に亜弓の故郷・宮城県の石巻に移住し、印刷会社で働き始めた。実家では末期がんでも漁師を続ける亜弓の父・勝美（吉澤健）が１人で暮らしていて近所の小野寺（リリー・フランキー）が何かと世話を焼いていた。

ある日、亜弓と衝突した美波が夜になっても戻らず、車で捜し回るが、心配でパニックになった亜弓が郁男に八つ当たりする。怒った郁男は彼女を車から降ろし、置き去りにしてしまう。その後、亜弓は何者かに殺され、遺体となって発見される。責任を感じ、郁男は次第に自暴自棄となっていく。

監督は「孤狼の血」の白石和彌。不条理な運命に翻弄されながら周囲の人々と織りなす人間模様を切なく、そして力強く描く演出は賞賛に値する。元ＳＭＡＰの香取慎吾も、ろくでなしでどうしようもないダメ男をうまく演じている。目を背けたくなるシーンも多いが、多くの愛を感じる作品である。（2019年08月08日・酒井）