ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ
多様な価値観集まる町
地下鉄で中心部へ30分というニューヨークの下町ジャクソンハイツ。ここは167もの言語が話される、世界中からの移民とその子孫が暮らす町。ゲイやトランスジェンダーなど多様な性的価値観を持った人々を、対立を経ながらも積極的に受け入れようとしている町でもある。同時に利便性に目を付けた大資本による再開発の波も押し寄せてきている。
ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマンはナレーションもテロップも入れず、この町で暮らす人々の日常や社会活動を的確に切り取り、テンポの良いリズムで編集する。画面にあふれるカラフルな色彩と多様な音楽、そして3時間強の映画の大部分は、集会等で自らの考えを述べる住民たちの姿をとらえており、観客は発言に耳を傾けているうちに、いつの間にか一緒に町のあり方を考え始めている自分に気付く。
アメリカの発展は移民やマイノリティーが多様性をもたらすことによって支えてきたのだという住民の言葉が心を打つ。コミュニティーや多様性に関心がある多くの人にぜひ見てほしい作品だ。(2019年09月05日・後藤)