ある町の高い煙突
鉱山の煙害との闘い
1910年、茨城県の入四間村では隣村の日立鉱山から出る黄色い煙によって農作物が枯れる被害に苦しんでいた。地主の家に生まれた関根三郎の祖父・兵馬は鉱山会社に掛け合うが、国策を理由に補償はするものの、煙害は我慢するようにと言われてしまう。
その後、兵馬が他界し、三郎は進学も夢もあきらめ、とことん煙害と向き合うことにする。そんな中、日立鉱山で煙害補償を担当する加屋淳平の誠実な対応に心を動かされた三郎は次第に立場の違いを超えて信頼関係を築いていくが、なかなか黄色い煙を除くことはできない。最後の手段として、高い煙突を作る試みがなされる。
原作は「八甲田山」「劔岳 点の記」の新田次郎が鉱山の煙害と戦った若者たちの実話を描いた同名小説。主演は無名塾の井手麻渡。渡辺大、小島梨里杏、吉川晃司、仲代達矢が共演している。監督は「天心」「サクラ花桜花最期の特攻」の松村克弥。100年前に煙害に苦しむ村人が鉱山側との対立を乗り越え、力を合わせて対策を講じた奇跡の実話を感動的に描いている。(2019年09月19日・酒井)