ハード・コア
もがく若者リアルに
1990年代の漫画雑誌グランドチャンピオンに連載された狩撫麻礼といましろたかしのコミック「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」に心酔した山下敦弘監督と俳優山田孝之が映画化にこぎつけた作品。
世知辛い世の中に順応できず、社会からはみ出し、底辺を生きる兄の右近(山田孝之)、頭が切れて世渡り上手だが、人生にあきらめを感じている弟の左近(佐藤健)。そして、右近が唯一心を開く同僚の牛山(荒川良々)。極右団体に属し、埋蔵金を掘らされていた右近と牛山はある日、廃工場で古いロボットを発見する。人工知能を持ったロボットの出現が3人の気持ちに変化をもたらし、物語はシュールなSFになっていく。
監督は自分の信念にぶれることなく生きていこうと苦悶(くもん)する若者たちの姿を独特の世界観で緻密に、時にユーモラスに描く。無表情さの中に、さまざまな感情があふれるほど浮かび上がる山田孝之の巧みな演技は必見。荒川良々は心に傷を持ち、物言えぬ牛山を怪演している。
脚本は「もらとりあむタマ子」「聖の青春」の向井康介。いびつな社会の闇でもがき反発しても、ピュアな心を失わない若者の姿をリアルに紡ぎ出し、胸を打つ。(2019年1月24日・杉尾久)