It's Only a Movie, But …

シネマ1987online

記憶にございません!

夢と理想取り戻す総理

三谷幸喜脚本・監督の映画第8弾。病院のベッドで目覚めた男。それは演説中に石を投げられ、一切の記憶を失ってしまった総理大臣・黒田啓介(中井貴一)だった。史上最低の支持率のダメ総理の記憶喪失は最高機密で、真実を知るのは秘書官の井坂(ディーン・フジオカ)ら数人のみ。政策も人の顔も家族の名前も思い出せない状態をいいことに、井坂は総理を操ろうとし、悪徳官房長官の鶴丸(草刈正雄)は異変に勘づき、失脚させようと画策する。

三谷監督作は「映画」としての味わいがない。屋外シーンはあっても舞台劇を見ているよう。だが、ぜいたくな芝居をスクリーンで見ていると思えば大いに楽しめる。主人公と政治家たちとのやりとりや、愛人関係にある野党党首山西(吉田羊)との絡み、来日した米国大統領(木村佳乃)を巡っての騒動などおかしく、せりふも練られている。記憶を失った男が捨て身で夢と理想を取り戻そうとするのもいい。中井ら豪華俳優陣が楽しげに演じ、警官の田中圭がもうけ役。日本のニール・サイモンと呼びたい三谷幸喜ならではのコメディーだ。(2019年10月03日・小野)

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